「公正証書遺言は費用がかかるから、自分で書ける自筆証書遺言にしよう」
そう考えて、いざペンを手に取ってみたものの、「これで本当に大丈夫なのだろうか?」と不安になる方は少なくありません。
自筆証書遺言は、紙とペンさえあれば作れる――ルール自体はシンプルに見えます。
しかし実際には、民法で定められた厳格な形式要件を一つでも満たさないと、せっかく書いた遺言書が紙切れになってしまう恐れがあります。
この記事では、自筆証書遺言の具体的な書き方を7つのポイントに整理しつつ、実務で実際に無効と判断された事例もご紹介します。
書き方を丁寧に追っていくほど、「これは自分一人では怖い」と感じていただけるはずです。
当事務所は、リスクの小ささと確実性の高さから、公正証書遺言をおすすめする立場です。しかしご事情によっては自筆証書遺言を選ばれる方もいらっしゃいます。どちらを選ぶにせよ、まずは「何が正しい書き方なのか」を知っていただくことが大切です。
ポイント① 全文を手書きで書く
自筆証書遺言の最大の特徴は、本文のすべてを遺言者ご自身が手書きしなければならないことです。パソコンで作成した文書は、ご本人が打ったものであっても無効になります。
ただし2019年の法改正により、財産目録に限ってはパソコンや通帳のコピーでの作成が認められるようになりました。この目録部分には、各ページに署名と押印が必要です。
実務では「本文の一部をパソコンで打ち、署名だけ手書きにしていた」という事例で無効と判断されたケースがあります。本文と目録の区別は、一般の方にはやや分かりにくい部分です。
ポイント② 日付は「年月日」まで正確に書く
日付は、遺言が書かれた時点を特定するための重要な要素です。年・月・日をすべて記載する必要があります。
実際に無効になった事例として、以下のようなケースがあります。
- 「2026年3月吉日」と記載されていた
- 「還暦の誕生日に記す」と日にちをぼかしていた
- 「2026年3月」と月までしか書かれていなかった
いずれも「その日を特定できない」という理由で遺言全体が無効とされました。
ご自身では「なんとなく分かるから大丈夫」と思いがちな部分ほど、法律的には厳しく見られます。
ポイント③ 署名は戸籍上の氏名で
署名は、ご本人が書いたことを証明する要素です。戸籍に登録されている氏名で書くのが原則です。
無効とされた実例には、以下のようなものがあります。
- 商売上の屋号や雅号のみを記していた
- 結婚後に旧姓で署名していた
- ペンネームや愛称で書いていた
「普段使っている名前で書けばいいだろう」と思った方ほど、ここで落とし穴にはまってしまいます。
ポイント④ 押印は必ず必要(できれば実印)
自筆証書遺言には押印が必要です。法律上は認印でも有効とされていますが、本人が押したことを立証しやすくするため、実印の使用が強く推奨されます。
押印漏れは、自筆証書遺言で最も多い無効原因の一つです。
「署名すれば押印は不要」と誤解されている方も少なくありません。
ポイント⑤ 不動産の特定方法に要注意
ご自宅の土地や建物を相続させる場合、住所だけで書くと特定不十分とされる可能性があります。正しくは、法務局の登記事項証明書に記載された通り、所在・地番・地目・地積などを正確に転記する必要があります。
たとえば「青森市長島の自宅」と書いた場合、同じ町内に別の不動産を持っていたり、住居表示と地番が異なっていたりすると、どの不動産のことなのか特定できず、その部分が無効になる恐れがあります。
登記事項証明書の取り寄せや読み取り自体が、一般の方には馴染みのない作業です。
ポイント⑥ 預金の書き方にもルールがある
預貯金についても、「どこの銀行の何という口座なのか」を明確に特定する必要があります。
- 金融機関名(○○銀行)
- 支店名(青森支店など)
- 預金の種類(普通/定期)
- 口座番号
これらを漏れなく記載することで、相続手続き時に金融機関で「どの口座のことか分かる」状態になります。
通帳を見ながら書けば難しくはありませんが、「複数口座を持っていて、どの口座に何を指定するか整理できていない」という方は意外と多くいらっしゃいます。
ポイント⑦ 訂正の方法は民法で厳格に決められている
書き間違いを修正したい場合、自筆証書遺言には民法968条で定められた正しい訂正方法があります。
- 訂正箇所を明確に示す
- 変更した内容を記載する
- 変更場所に押印する
- 遺言書の末尾などに「○行目○字削除、○字加入」と変更内容を付記し、署名する
この手順を一つでも欠くと、訂正部分だけでなく遺言全体の効力が疑われることがあります。
実際に、訂正に二重線を引いて訂正印を押しただけで済ませたケースで、遺言の信用性が争われた事例もあります。
法務局の自筆証書遺言保管制度を使えば安心?
2020年7月から、法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度が始まりました。青森地方法務局でも利用できます。
この制度のメリットは、紛失や改ざん、家族による破棄のリスクを防げること、そして家庭裁判所での検認手続きが不要になることです。
ただし大切な注意点があります。法務局の職員は、形式面のチェック(署名があるか、日付があるかなど)はしてくれますが、内容面のチェック(遺産の特定が十分か、意図通りの相続になるかなど)はしてくれません。
つまり「形式だけは整っているが、実際に使おうとすると特定が曖昧で使えない」という遺言書が、そのまま保管されてしまう可能性があるのです。
書き方を知るほど見えてくる、公正証書遺言の安心感
ここまで7つのポイントを見てきて、いかがでしょうか。
「これを全部ご自身でチェックしながら完璧に仕上げるのは、思った以上に難しい」と感じられた方も多いかもしれません。
公正証書遺言であれば、公証人が形式面・内容面の両方をその場で確認します。さらに、
- 原本が公証役場に保管されるため紛失の心配がない
- 家庭裁判所での検認手続きが不要
- 意思能力について公証人が確認するため、後日の争いになりにくい
- 遺言執行の際にそのまま銀行や法務局で使える
といった実務上の安心が備わっています。
作成時の費用は数万円から十数万円程度ですが、将来のトラブル発生時にかかる費用や心労と比べれば、十分に価値のある投資と言えます。
当事務所ができること
しぶた行政書士事務所では、次のようなサポートを行っています。
- 自筆証書遺言の原案チェック(書き方に不備がないかを専門家の目で確認)
- 公正証書遺言の作成サポート(原案作成・公証役場との打ち合わせ・当日の立ち会いまで一貫対応)
- 財産調査のお手伝い(不動産登記情報や預貯金の整理)
- ご家族状況に応じた最適な遺言タイプのご提案
青森駅から徒歩15分、長島のアクア青森スクエア6階に事務所がございます。初回のご相談は無料です。
まとめ:書き方を知ることが、正しい判断の第一歩です
自筆証書遺言は「手軽」に見えますが、書き方を丁寧に学べば学ぶほど、形式要件の厳しさと特定の難しさが見えてきます。
「自分で書けるかどうか」で判断するのではなく、「ご自身やご家族にとって、どの方式が本当に安心できるか」で選んでいただくのが大切です。
遺言書の作成を検討されている方、自筆で書いた遺言書が手元にあって心配な方は、お気軽にご相談ください。一緒に最適な方法を探していきます。