top of page
検索

親が亡くなった直後、銀行口座はすぐ凍結される|慌てないための事前知識

  • 執筆者の写真: 優希 澁田
    優希 澁田
  • 29 分前
  • 読了時間: 4分

「親が亡くなったら、まず銀行に連絡しなきゃ」と聞いたことがある方は多いと思います。しかし、その連絡をした瞬間に何が起こるか、正確にご存知でしょうか。


銀行は、口座の名義人が亡くなったことを知ると、その口座を即座に凍結します。これは相続人同士のトラブルを防ぐための銀行側の措置ですが、遺族にとっては思わぬ問題を引き起こします。葬儀費用を引き出そうとしたら「お取り扱いできません」と言われた——そんな事態が実際に起きているのです。


口座凍結は「いつ」起きるのか

よくある誤解が「死亡届を出したら自動的に凍結される」というものです。実は、市区町村に死亡届を出しただけでは、銀行に情報は伝わりません。銀行が凍結するのは、遺族が銀行に連絡した場合、または新聞のお悔やみ欄などで銀行側が死亡を知った場合です。


つまり、銀行に連絡するタイミングによっては、しばらくの間は口座が使える状態が続くこともあります。ただし、だからといって「黙っていれば使い続けられる」と考えるのは危険です。名義人の死亡後に口座からお金を引き出す行為は、後に相続人同士のトラブルの原因になります。「葬儀費用のために引き出しただけ」であっても、他の相続人から「勝手に引き出した」と疑われ、遺産分割協議が難航するケースは珍しくありません。


凍結されると何ができなくなるのか

口座が凍結されると、その口座に関するすべての取引が停止します。具体的には、現金の引き出し、振り込み、口座振替(公共料金の自動引き落としなど)がすべて止まります。


特に注意が必要なのが、亡くなった方の口座から引き落としていた各種支払いです。電気・ガス・水道などの公共料金、クレジットカードの引き落とし、各種ローンの返済——これらがすべて「引き落とし不能」になり、未払い扱いとなります。


残されたご家族が同居していた場合、生活に直結する支払いが突然止まることになります。この事態を想定していなかった方は非常に多いのが実情です。


凍結を解除するには「戸籍の束」が必要

口座の凍結を解除し、預金を引き出すには、銀行所定の相続手続きが必要です。この手続きには、一般的に亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書、遺産分割協議書(遺言がない場合)、相続人全員の署名押印がある銀行所定の書類が求められます。


特に戸籍謄本は、本籍地が転々としている場合、複数の市区町村から取り寄せなければなりません。1ヶ所で済むことはむしろ少なく、3〜5ヶ所に請求が必要なケースも珍しくありません。すべて揃うまでに1〜2ヶ月かかることも普通です。


その間、凍結は解除されないまま。葬儀費用や当面の生活費をどう工面するかという現実的な問題に直面します。


2019年の民法改正で「仮払い制度」ができたが…

2019年7月の民法改正で、遺産分割が完了する前でも、一定額の預金を引き出せる「仮払い制度」が設けられました。各相続人は、各口座ごとに「預金残高×3分の1×その相続人の法定相続分」の金額を、単独で引き出すことができます(ただし、1つの金融機関あたり150万円が上限)。


この制度のおかげで、葬儀費用や当面の生活費を確保しやすくなりました。しかし、この仮払い制度を利用するにも、亡くなった方の除籍謄本や相続人であることを証明する戸籍謄本は必要です。「書類なしですぐに引き出せる」というわけではありません。


また、仮払いで引き出した金額は、後の遺産分割で精算されます。引き出した記録は残りますので、他の相続人との関係において透明性を保つことが重要です。


凍結トラブルを防ぐための事前対策

口座凍結で困らないためには、生前の対策が最も効果的です。


まず、遺言書を作成しておくことで、相続手続きがスムーズになります。遺言執行者を指定しておけば、その執行者が銀行手続きを行えるため、相続人全員の署名押印を集める手間を大幅に減らせます。


また、家族信託を活用する方法もあります。生前に信頼できる家族に財産管理を任せる仕組みを作っておけば、万が一の際にも口座凍結の影響を最小限に抑えることができます。


ただし、これらの対策は「正しく設計する」ことが前提です。遺言書の要件不備で無効になるケースや、家族信託の契約内容に不備があるケースなど、自己流で進めた結果かえって問題が複雑になることもあります。


まとめ:「まさか」に備える相続の準備

口座凍結は、大切な人を亡くした直後の、精神的にも最もつらい時期に起こります。悲しみの中で複雑な書類を集め、銀行の窓口で何時間も待ち、何度も足を運ぶ——その負担は計り知れません。


「うちは大丈夫」と思っていても、いざその時になると慌てるケースがほとんどです。事前に対策を講じておくことで、残されたご家族の負担を大きく減らすことができます。


当事務所では、相続発生後の銀行手続きのサポートはもちろん、生前の遺言書作成や家族信託のご相談もお受けしています。「もしもの時」に備えて、一度ご相談ください。

 
 

最新記事

すべて表示
「相続登記」が義務化されたのをご存知ですか?放置すると過料も

「親の家の名義、まだ親のままだけど、いつか変えればいいか」——そう思っている方は少なくないのではないでしょうか。 実は、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記しなければ、正当な理由がない場合は10万円以下の過料が科される可能性があります。 しかも、この義務は2024年4月1日より前に発生した相続にも適用されます。「何年も前に親が亡くなった

 
 
自筆証書遺言が無効になる落とし穴|知らないと相続トラブルに発展する実例と対策

「自分で遺言書を書いておけば大丈夫」と考えていませんか?実は、せっかく時間をかけて書いた遺言が、ある日突然「無効」と判断されるケースは珍しくありません。 自筆証書遺言(手書きの遺言)は、費用がかからず自分のペースで作成できる利点がある反面、法律で定められた要件を一つでも満たさないと、その遺言書全体が無効になってしまいます。無効になれば遺族間での予期しないトラブルに発展することも。本記事では、実務で

 
 
bottom of page