相続放棄は「3ヶ月」を過ぎたらアウト?期限の落とし穴と、知らなかったでは済まない理由
- 優希 澁田
- 2 日前
- 読了時間: 4分
「親の借金なんて関係ない」「相続放棄すればいいだけでしょ」――そう思っている方は、ぜひこの記事を読んでください。相続放棄には厳格な期限があり、それを過ぎると、たとえ数千万円の借金であっても引き継がなければならなくなる可能性があります。
相続放棄の手続きは、民法第915条で「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」と定められています。この3ヶ月を「熟慮期間」と呼びますが、この期間の短さと厳しさを正しく理解している方は、実はそれほど多くありません。
落とし穴①:「3ヶ月」は想像以上に短い
親族が亡くなった直後は、葬儀の手配、関係者への連絡、役所への届出など、やるべきことが山のようにあります。悲しみの中でこれらの事務をこなしながら、並行して「財産や借金がどれくらいあるかを調べ、相続を放棄するかどうかを判断し、家庭裁判所に申述する」ところまで3ヶ月以内に終わらせなければなりません。
必要な書類も、被相続人の戸籍謄本、住民票の除票、申述人の戸籍謄本など複数にわたります。戸籍の取得だけでも1〜2週間かかることがあり、気づいたときには期限が目前に迫っていた、というケースは珍しくありません。
落とし穴②:期限を過ぎると「借金も自動的に相続」される
熟慮期間の3ヶ月を何もせずに過ぎてしまうと、法律上「単純承認」したとみなされます。つまり、プラスの財産もマイナスの財産(借金)も、すべて引き継いだことになるのです。
「うちの親に借金なんてないはず」と思っていたのに、亡くなった後に消費者金融からの督促状が届いた、連帯保証人になっていたことが判明した――こうした事態は実務では度々起こります。借金の存在に気づいたときには、すでに3ヶ月を過ぎていた、ということも少なくありません。
落とし穴③:「知らなかった」は原則通用しない
「相続放棄に期限があること自体を知らなかった」「3ヶ月で判断しなければならないとは思わなかった」という理由は、残念ながら法律上は認められません。法律を知らなかったこと自体は、期限の延長や例外の理由にはならないのです。
ただし、最高裁判所の判例(昭和59年4月27日判決)では、限定的な救済が認められています。被相続人と生前ほとんど交流がなく、相続財産が全く存在しないと信じ、かつそのように信じることに相当な理由がある場合に限り、3ヶ月の起算点を「借金の存在を知った時」に後ろ倒しできるとされています。
しかし、この救済が認められるにはかなり厳しい条件があります。同居していた親子のように、生前から財産状況を知り得る立場にあった場合は、まず認められません。「借金があるとは知らなかった」というだけでは不十分なのです。
落とし穴④:「とりあえず財産を使った」で放棄できなくなる
もう一つ見落とされがちなのが、相続財産に手をつけてしまうケースです。被相続人の預金を引き出して使った、不動産を売却した、遺品を処分した――こうした行為は「法定単純承認」とみなされ、たとえ3ヶ月以内であっても相続放棄ができなくなります。
「葬儀費用を親の口座から出しただけ」という場合でも、金額や状況によっては単純承認と判断されるリスクがあります。何が「処分」に該当するかの判断は非常に微妙で、自己判断で動くと取り返しのつかない結果になりかねません。
まとめ:早めの相談が最大の防御策
相続放棄の3ヶ月という期限は、知っていても知らなくても、等しく適用されます。期限を過ぎれば借金を引き継ぐリスクがあり、財産に手をつければ放棄の権利を失います。
家庭裁判所に申し立てれば熟慮期間を延長できる制度もありますが、これも期間内に手続きする必要があり、「忙しかった」「知らなかった」という理由では認められません。
大切なのは、相続が発生したらできるだけ早い段階で、財産と負債の全体像を把握し、専門家に相談することです。3ヶ月はあっという間に過ぎてしまいます。
「借金があるかもしれない」「期限が迫っている」など、少しでも不安なことがあれば、お気軽にお問い合わせください。
