相続人の中に「連絡が取れない人」がいる場合の対処法
- 優希 澁田
- 4 分前
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親が亡くなって相続が発生したのに、相続人の中に「連絡が全く取れない人」がいる——こんなケースは珍しくありません。引っ越して住所が分からなくなった、音信不通になっている、行方が分からないなど、理由は様々です。
ここで重要な落とし穴があります。遺産分割協議(誰がどの遺産をもらうかを決める手続き)は、相続人全員の同意がなければ成立しません。一人でも欠けると、その協議はすべて無効になってしまうのです。
つまり、連絡が取れない相続人がいるだけで、せっかくの相続手続きが完全に止まってしまう可能性があります。では、こんなときはどうすればよいのでしょうか?
連絡が取れないと何が起こるのか
相続が発生すると、遺産分割協議書への署名押印、預金口座の解約手続き、不動産の名義変更、税務申告など、さまざまな手続きが必要になります。すべてのステップで、原則として相続人全員の合意と署名が必要です(民法907条)。
連絡が取れない相続人がいると、この「全員の合意」が得られません。結果として、銀行は遺産分割協議書がないので預金の払い戻しに応じられず、不動産は誰のものかが確定しないため売却や担保設定ができず、相続税申告の期限(死亡から10ヶ月以内)が迫る可能性があります。こうなると、残された家族は非常に困った状況に陥ります。
「行方不明」と「連絡が取れない」は別問題
相続人が「完全に行方不明」と「単に連絡が取れない」では、対応が変わります。連絡が取れないが生きているはず、または生死不明の場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てることができます。不在者の利益を守るために、家庭裁判所が専門家を任命し、その人が代理して遺産分割協議に参加します(民法25条)。
一方、完全に行方不明で7年以上音信不通の場合は、さらに「失踪宣告」という制度があります。これは法的に死亡したものと扱う制度で、より複雑な手続きが必要です。どのケースに当てはまるかで対応方法が大きく変わるため、専門家への相談が不可欠です。
不在者財産管理人申立てが必要
最も一般的なケースが「不在者財産管理人の選任申立て」です。この手続きの流れは、まず家庭裁判所に申し立てを行い、連絡が取れない相続人がいることを説明して不在者財産管理人の選任を求めます。次に家庭裁判所が財産管理人を選任し、多くの場合は行政書士や弁護士などの専門家が選ばれます。選ばれた管理人が連絡の取れない相続人の代わりに遺産分割協議に参加し、すべての相続人(代理人含む)の同意で初めて遺産分割協議が有効に成立します。
申立てに必要な書類も多く、家庭裁判所との往復も発生します。また、選任された財産管理人には報酬が発生することが多いです。一見すると手続きは単純に見えるかもしれませんが、実際には非常に細かな要件があり、個人で完全に対応するのは現実的に難しいのが実情です。
手続きの前に「本当に連絡が取れないのか」の確認が重要
申立てをする前に、一度は冷静に考えてほしいポイントがあります。相続人が「本当に連絡が取れない」のか、それとも「連絡を試みていない」だけなのか。複数の方法で連絡を試みたのか(電話、郵便、親戚経由など)、住所が分からなければ戸籍謄本から現住所を調査できないか、長年の不動産登記簿からかつての住所が手がかりにならないか。こうした基本的な調査をすることで、実は連絡が取れるケースもあります。それでも連絡が取れない場合は、正式に家庭裁判所の手を借りることになります。
当事務所では
「相続人に連絡が取れない人がいる」というご相談は、当事務所で年間を通じてお受けしています。連絡先の調査からサポートいたします。相続手続きが完全に止まってしまう前に、まずは一度ご相談ください。専門家の視点から、最適な対応方法を一緒に検討させていただきます。
